サンプル:FRI Magazine

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FRI Magazine 【第一号】 サンプル 

FRI Magazineは他人の書籍などや発言の引用は一切行わず、著者が実際に見たこと、感じたことを中心に、著者自身の視点から分析しコンテンツ配信してゆきます。
平成15年4月5日
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=外資系企業と日系企業=
みなさんこんにちは。Fri Magazineの記念すべき第一号の配信は、外資系業と日系企業の違いについてです。今回このテーマを選んだ理由は、FRIの活動を通じ、特に就職・転職というテーマでこの議論が活発になされたからです。私は前職を含め、合計6社の日本企業、2社の外資系企業を経験してきました。そうした中で、私の感じた経験に基づくコンテンツを配信していきます。

【外資系企業に就職するのは幸せか】
日本経済の不況と就職率の低下のあおりをうけ、各企業も採用を縮小し始め、昔のバブル時代のような100社から内定をもらった「内定切り」といった神話も生まれないほど学生の就職率は厳しくなってきた。さらに、せっかく入った企業も業績不振で給与もボーナスも上がらない。さらに、30歳迄にある程度の実績を残さねば、リストラか左遷の憂き目に合うという心配が拍車をかける。こういう中で実力主義、破格の報酬を掲げる外資系企業に人気が集中し、学生にとって外資系企業は憧れの的となるわけだ。アクセンチュアをはじめとするコンサルティングファーム、外資系投資銀行など響きの良い会社名は大学生の(特に高学歴の)就職人気企業のトップに現れるようになった。一方、昔は一生安泰と呼ばれた大メーカーなどは、その古い体質故に、ますます人気を下げている。しかし、学生が全く考えていないのは、こういう外資系で破格の報酬を得られる人間は全体のコンマ数パーセントに過ぎないのに、1000倍という倍率の学生「全員」が破格の報酬をもらえると思ってエントリーしているという、笑うに笑えない事実である。1/1000という確立で外資系企業に入っても、まず3年で30%は会社をやめ、残った人間で成功するのはその中でも数パーセントだ。そういう外資系に就職することが本当に幸せなのだろうか。

【ドライな外資系企業】
私が初めて外資系企業を見たときは、驚きの連続だった。身近なところでは年賀状、お歳暮、結婚式の部長の主賓など、日本企業では当たり前と思われていた常識がまったくなかった。特に驚いたのは年賀状で、私が日系企業にいたときは、年末には名簿を作成し、それこそ課員全員で年賀状を書きまくっていた。しかし、最近姿を見ないなと思ったら、実はハワイで結婚式を密かに挙げていたというのが外資系企業である。それに一年も気が付かない、いや、誰もそんなこと知ろうとさえしない。これが外資系企業なのだ。このようなドライな人間関係は仕事にも当てはまる。外資系企業は仕事で「こいつは使えない」と判断すれば、ストレートに本人にそれを通知し、周りの人間にも「彼は使えないからはずした。仕事とはそういうものだ」とハッキリ言い、その後は腫れ物にでも触るような扱いを受けることになる。それに対して日本企業は出向や左遷を「栄転」と言って、みんなで送別会まで開いてお祝いする。つまり、要因は一緒でもやることが逆さまなのが両者なのである。

【外資系企業を進める理由】
私は、そういう非人間的、ドライな外資系企業だからこそ学生のみんなに勧める立場である。私自身、日系企業から外資系企業に転職し、周りのみんなからもせっかくここまで積み上げたものを壊すのか、ある程度将来も約束され、実績も残しているのになぜリスクを負うのか、お前はアホだ、とまで言われた。そして現実に私の年収は下がり、自分よりも一回りも年下の人間が上司になり、右も左も分からない仕事を毎日四苦八苦しながらこなしている。しかし、それ以上に得られる実感は、「会社に依存しない生き方」をしているということだ。私は転職してから毎年年末に「ああ、今年もクビならずにすんだ」と胸をなで下ろす。この緊張感が大事なのだ。私の転職を否定した人間はすべて「お前の力は今の会社でしか通用しないのだ」と言っているのと同じである。しかし、山一証券が潰れる時代である。それが事実だとしたら、もし会社が潰れたら、もし、私がクビになったら私はどうやって生きていくのだろうか。私が日系企業を辞めた最大の原因はここにある。自分の人生だ。会社と一緒に心中するのはまっぴらごめんというわけだ。そういう意味で、白黒をハッキリつける外資系企業の方が(少なくとも私にとっては)合っていると思う。今の日本経済はすべてをごまかし、ごまかしやってきたからこうなったのだ。左遷を「栄転」と呼び、みんなでお祝いするようなカルチャーからはプロフェッショナリズムは生まれないと私は思う。私は昔の会社の同僚からよく連絡をもらう。彼らの相談は内容を読まなくても分かる。「俺も転職したいのだが、どうすればよいのか」という相談と思って間違いないし、実際そうであった。彼らに対し、私は外資系企業のことを説明すると何人かは実際にアクションをおこし、さらに何人かは転職を成功させる。しかし、ほとんどの人間は傷つき、数年で会社を退職した。これをもって、「やっぱり外資系はリスクが高い」と否定的に思うのが一般的だが、本当にそうだろうか。私はこういう人と今でもつきあっているが、彼らから「昔の会社の方が良かった」という言葉を聞いたことがない。つまり彼らは後悔していないのだ。それは、繰り返しになるが、自分が「会社に依存しない生き方」をはじめたという実感からくる満足感なのである。

【資本の国籍はカルチャーに関係あるのか】
これはあると言えばあるが、無いと言えば無い。曖昧な言い方であるが、整理するとこういうことである。つまり、外資と一般に言われているが、それは大きな単位での会社のくくりでしかなく、大事なことは、その会社のカルチャーがフェアーであり、公平であるかどうかという事だ。異文化である海外に進出している国際企業だけあって、外資は結果的にフェアーなカルチャーが多く、閉ざされた世界の日本企業では結果的にいびつな構造になっていることが多いということだ。資本の国籍で会社のセグメントを分けることは実は間違っており、日系企業でもフェアーで公平な会社はいくらでもあるだろう。ただし、一般的に言って古い体質、エスタブリッシュメントされた企業はこのような傾向が強く、ベンチャーなど規模が小さく年齢が若い企業はむしろ外資より透明でフェアーである場合が多い。私はあえてこの執筆を外資と日系というコントラストで書き始めたが、実は言いたいことはそこなのである。これに対して日本の学生は安定を求める傾向があるため、結果的に旧体質型企業への就職をしてしまうというパラドックスがあるわけだ。ある統計によると日本企業に就職した学生の25%が3年以内に辞めているということだが、これはこういうことが原因である。

【優秀な学生が外資系に行くことが日本企業を良くする】
このように、私は優秀な学生がどんどん日本企業を捨てて外資系企業に行けばよいと思う。それは、逆説的だが日本企業が良くなる唯一の手段であるからだ。企業文化というものは恐ろしいもので、一度作り上げられたらもはやテコでも動かない。しかし、こうしたエスタブリッシュメントを破壊する効果的な手段は、競争させることだと思う。つまり、平たく言えば、日本の優秀な学生がどんどん外資に行けば、日本企業は競争せざるを得なくなり、否が応でも組織や制度を変更せざるを得なくなると言うわけだ。私の以前いた会社はどんどん若く優秀な人間が辞めている。しかし、だから私に相談にきた昔の同僚にも積極的に転職を進めている。これは良いことだと思う。つまり、会社自身に魅力がないわけだから、優秀な社員を留めたいなら、会社自身が魅力的になればよいのである。なれないなら社員は去っていき、会社はますます活性化しなくなる。これは競争のルールだ。私は日系企業に育てられた人間として心から日系企業を愛している。だからこそ、それがよいと思っている。私が外資系企業を進める理由である。

(次回は【人気企業へ行くことは良いことか】ですご期待ください)
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